2010年01月31日

「ぼくの伯父さんの休暇」/バレリーナの所作

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あまり元気がないときに、メールでちょっと一声かけて、くすっと笑わせてくれる。
そして、その一言が結構元気の素になって、結局後を頑張れてしまったりする。
本人には全然そんなつもりはないのだろうし、受け取る側だって、
他の時だったら全然違う受け止め方をするかもしれないのに、タイミングというのは本当に不思議なもの。

さて。
今日ご紹介する本、「ぼくの伯父さんの休暇」にも、ちょっとそれに似たところがあるような気がします。

ところで、「ぼくの伯父さんの休暇」と言えば、普通はジャック・タチの映画のことですよね。
でも、私は、どいう運命のいたずら(オーバー)か、本から先に出会ってしまいました。
これは、小説を映画化したものではなく、映画のノベライズで、つまり、ノベライズ嫌いの私なら普段は絶対に手に取らないジャンルの本なのですが・・・。


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出会ったのは、学生の頃住んでいた街の、小さな古本屋さん。
あの頃、既に全国チェーンの古本屋の展開も始まっていましたが、私の住んでいた街にはまだ出来ていなかったので、よって私は専ら、当時の住まいから歩いて行けた二つの個人経営の古書店を贔屓にしていました。
でも、たとえ大手が近くにあったとしても、私がその二つのお店に通う頻度は変わらなかったと思います。
だって、何よりもあの独特の雰囲気が大好きだったし、それに「当たり」の確立が半端ではなかったんです。
ただ、それは大手チェーンの感触や品揃えの傾向を知った今だからこそわかること。
当時は、その二つの古本屋の「歩留まり率の高さ」がどんなに凄いことなのか、当然知る由もありませんでした。
それにしても、あの頃の本屋通いはちょっと尋常ではなかった。
というのも、受験生の頃自分に読書を禁じていた私は、大学に入った途端にたがが外れたように本を読み始めたから。
ただでさえ読書中毒だったんです。
それが1年間封印していたものだから、そのリバウンドたるや、今考えても空恐ろしいものが・・・。

っと、話が完全に逸れています。

でも、とにかく、その二つの(特に住まいから遠い方の、とは言っても歩いて5分の)古本屋さんでは、大切な出会いをたくさん得ることが出来ました。
ある程度の傾向があるとはいえ、神保町あたりの高度に専門家された古書店とは違うので、それなりに幅広いジャンルをカバーしていたのもよかったのでしょう。
(それと、価格が「古書」ではなく「古本」なのも、勿論学生にとっては大切なところでした。もうひとつの、住まいから近い古本屋さんは、若干「古書」寄りの本が多く、そういう点では若干利用度が低くなってしまった感がありました。)
特に、和洋の純文学と海外古典ミステリ関係以外に疎かった私にとって、そこで得たその他のジャンルとの出会いは、真実貴重なものだったと思います。

たとえば、特に疎かったコミック。
そこには、どういうわけか「少女漫画の王道」が殆ど揃っていて、たとえば「日出処の天子」、「風と木の歌」(なんと私は、その番外編小説である「神の子羊」を先に読んでいるという非常に珍しい経験の持ち主)、「ポーの一族」、「悪魔の花嫁」、「空の食欲魔人」(これはちょっと王道とは違うか)などなど、その他多くの名作に、ほぼ先入観なしで出会えた私は幸せ者というものでしょう(「ガラスの仮面」は、当時出来た新しい友達が全巻貸してくれました)。
そして、そこで出会ったそれらの作品を窓口に、今度は同じ作家の作品に興味が水平展開していく。
私は収集家ではありませんが(一度手に入れた本は絶対に手放しませんけど)、コレクターの心理と、同じ作家の小説や漫画を全部読み極めたい欲というのは、どこか似ているような気もします。

えーと、いまだに話が逸れたままですね。

でも、ともかくも、当時手に入れた漫画や本は私の宝物ですし(そういえば、文庫ではない、一冊にまとまったハードカバーの稲垣足穂全集や、古井由吉の美しい装丁本「槿」もそこで見つけたものです)、そして、そこの品揃えならば信頼できる、という前提があるからこそ、未知の作家の本にも、安心して手が伸ばせる、そういうネットワークが、私の中に出来ていたのだと思います。

おわかりですね。
そう、「ぼくの伯父さんの休暇」に出会ったのも、そういう背景のもとでのことだったのです。
もしも、大手チェーンで見かけていたら、私はこの本を手にとらなかったでしょう。
昔ながらの古本屋とは、一種のセレクトショップです。
店主が納得した商品を仕入れ、販売しているから、そこには自然とテイストや傾向が生まれる。
そして、顧客がその傾向を好み、やがてその書店を信用するようになると、買い手(特に財源に乏しい学生のような)も冒険がしやすくなります。
「知らない作家だけど、ここに置いてあるのだから」という理由で、その本を手に取る気になる。
これまた、タイミングの妙味でしょうか。

とかなんとか言っているうちに、紙面(そんなものはない)も尽きそうな勢いですが、もうひとつだけ。

最近、本を本屋で買うことがめっきり減りました。
というのも、たいていネットで買い物を済ませてしまうから。
だって、ネットならば欲しい新刊が発売日に確実に手に入るし、中古本だって、自分の足で探すよりも、ネットを使った方がなんぼか楽なのですもの。

でも、それだと、確かに「欲しい本は確実に手に入る」し、家まで届けてくれるのだから便利ではあるかもしれないけど、「偶然の出会い」に乏しくなってしまいます。
仮にレビューやリストマニアを参考にするにしても、そこにあるのは、そのネット書店で手に入る、版を重ねている本ばかり。
すなわち、出会っているようで、その幅は実に狭いものになってしまうのですね。
いいものに出会いたかったら、やっぱり自分の足で探す手間を惜しんではだめなのです。

子供の頃、その古本屋でさえ家の近くになく、また新刊書を次々に買えるような経済事情でもなかったので、デパートの催事場でたまに催される古本市は無上の楽しみでした。
一番安い50円のワゴンの擦り切れた本をひっくり返して、面白そうな本を探していく。
欲しかった本に出合えたときはちょっと凶暴なくらい喜び、見たこともない綺麗な装丁の本や、カバー見返しに書いてあるサマリーが妙に魅力的な本に出会ったときには、それこそ宝石の鉱脈を見つけたような気持ちになる。
あのわくわく感も、何にも換えがたいものでした。

さて、ではそろそろ本当に「ぼくの伯父さんの休暇」に戻りましょう。
とは言っても、内容を具体的にご紹介するわけではないのですが・・・。

冒頭でも申し上げたように、元気がないときに何気なく開いたら、いつの間にか読者を引き込んで、思いもよらぬところでくすっと笑わせてくれる。
そんな嫌味のない、けれども一瞬先の展開が読めずにどこかハラハラしてしまう、目の離せない魅力とエスプリに満ちた本であることは間違いありません(それはきっと映画も同じでしょう)。
でも、先日パラパラと捲っていて、実はもうひとつ気付いたことがあるのです。

それは、挿絵。


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と、このような小粋な挿絵が、ほぼ全見開きごとに散りばめられているのですが(ユロ氏のシルエットが実写まんまなのが更に笑いを誘います)、そこから受ける印象が、どういうわけか妙に洗練されているのです。
どうして?おフランスだから?と、暫く眺めていて、はっと気付きました。


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見えますか?(↑)
全ての絵において、足元が綺麗なのです。
もっと言うなら、登場人物の足元のほぼ全部がバレリーナのようにアンドゥオールになっていて、かつポジションを取り、また膝も綺麗に伸び、体全体のバランスや所作も、どこかダンサーを思わせる、重心の安定したものになっているのです。

うーむ、これは偶然なのでしょうか。

ということで、何が言いたかったのかよくわからない今日の記事になってしまいましたが、ともかくも「ぼくの伯父さんの休暇」。
眉間にしわが寄ってしまうようなときには、ぜひお勧めの軽やかな一冊です。
先日の波津彬子の「グレイ卿の幽霊」のときにも似たようなことを書きましたが、たとえオリジナル(映画)の方をご覧になっていなくとも、十分に楽しめる一品だと思います(現に私がそうでしたから)。

こういう本を一冊手に持って、ローカルな電車で海や山に向かったら、なんだかよくわからないけれど何かの「ごっこ」のようで、「自分的盛り上がり」が出来そうですね。

そこで私たちは滑稽なパントマイムを見ることになった。
ユロはタオルでからだをこすった。ところが、あろうことか、彼の体とタオルの間に杭が立っていたのだ。ペンキ塗りたちの密かに投げかける、脅かすような視線の圧迫に取り乱したのか、ユロは自分の行動をコントロールすることができなくなった。
右から左、上、下。肩甲骨から腰の辺り、そしてあちらこちらと、彼は自分の背中をこすっていると思っていたが、実は彼が本当に力一杯こすっていたのは、何と杭なのであった。両膝を軽く曲げ、彼は作業に没頭し、顔の上には少しずつ本物の満足の表情が浮かんできていた。
彼は軽く口笛を吹いていた。

意識的に気持ちを緩めたい日のベッドサイドブックとしても、ちょっとおすすめかも。

でも、「ぼくの伯父さんの休暇」。
結構、「友達がいのあるいいヤツ」なのです。




(ちなみにこちらは、今日の「一日一空」。)


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2010年01月30日

今夜はブルームーン

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最近、毎週花を買っているような気がします。
こちらは、先週衝動買いしたニューフェイス、ヘーベ・グリーンフラッシュ。
実は今日も買ってしまったのですが、そちらのお披露目は、また後ほど。


さて、今夜はブルームーンです。
ブルームーン、すなわち、同じ月の間に満月が二回見られる、その二度目の満月のこと。
先日も確か記事の中でもご紹介しましたね。
今日は、朝からすっきり晴れていたので、期待は十分です。
そのまま雲が出ないことを祈りつつ夕方を迎え・・・。


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この通り。
日の落ちる時間になっても、空気が完全に澄み切って、素晴らしい夕映えが始まっています。


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ふと上空を見上げると、まだ青い中天に、飛行機雲(飛行機つき)。
明後日あたりには、また雨になるのでしょうか。
でも、今夜が晴れていれば、とりあえずはいいのです。

夕方の景色は、野菜を頂きに行った知人の家からのものですが、さて、その帰り道。
私は、期待していました。
ちょうど、月が昇る時間。
もしかしたら、山の端から顔を出すところを見られるのではないかしら・・・。


すると。


昇ってきました!
手のひらにのせたらたわむのではないかと思ってしまうような、ずっしりとした満月です。
私のデジカメでは、見た通りに撮影出来ないので(それに運転中だったし)、
あの素晴らしい、昇る月の画像をお届け出来ないのが残念ですが・・・。


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こちらは、家についてから撮った、闇の中に浮かぶ満月。
その明るさで、周囲の空が輝いているほどです。


皆さんも、この素晴らしいブルームーンを、ご覧になれましたか?
ブルームーンを見た人には、幸運が訪れるそうです。
もしもまだご覧になっていない方で、なおかつ今夜、
まだ月の出ている時間帯にこの記事をご覧になった方は、
是非外に出て空を見上げてみて下さいね。


でも、もしも見逃してしまった方にも、ささやかではありますが、
ラビットがこちらの画像で幸運のおすそ分け。


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少しは、効き目があるでしょうか。


では、みなさまどうぞ、今夜もよい夜を。




【追記】
後から知ったのですが、今夜は、今年で一番大きい満月を見るチャンスだったんですって。
でも、ほんとにその通りです。
もしかしたら、今夜の月を見られたことが、すなわち幸運だったのかもしれませんね。









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2010年01月29日

一日一空

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今朝の空。









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2010年01月28日

雨を待つ日/野ばら

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午後から雨になるせいか、体が紅茶やコーヒーなどの刺激物を受け付けてくれせん。
特に紅茶。
タンニンが鉄と結びついてしまうのを、体が察知しているのかしら。
低気圧のときは、血中の酸素濃度が下がるので、
普段から貧血気味の人間にとっては、ちょっとの鉄も惜しいのは確かなのですが。。。

それとも、逆プラセボ?

個人的には、室内にいて外は雨、という風情は大好きなのに、
体は妙に几帳面に正直で困ります。

さて、ともかくも、そんな朝はハーブティー。
今朝は、ロースヒップティーを淹れることにしました。


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画像のこちらは、100%野ばらのローズヒップティー(オーガニック)。
先日、100g買い求めた際に、おまけで頂いた1回パックです。
ハーブティーは、パッケージが綺麗ですね。


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冬の雨は、春の兆し。
この雨によってますます寒くなるということはわかっているのに、
そう思うと、雨を待つ空の向こうにもどこか花の色が隠されているようで、
ふっと吹いて確かめたくなってしまうのです。。。









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2010年01月27日

明度/彩度

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夜明け前に家を出ることの多い毎日ですが、
その夜明けも、少しずつ早くなってきているようです。

今朝は、西の空に映える朝焼けが本当に見事でした。
日の出前から、西の空がうっすらと朱鷺色に染まり始め、
やがて、雪を頂いた西の山々が徐々にその色を吸い取っていく。
日が完全に昇れば、山の色は深い忘れな草の色に染まり、そして今度は、
先ほどまでセピア、朱鷺色、花色のグラデーションだった東の空が、
りんごの蜜の色になっていきます。


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寒い毎日ですが、この時間だけは、本当に好きです。

それから、ふきのとう。
野生の沢蕗のふきのとうの香りは、ハウス栽培のそれや、
水蕗のふきのとうとは、明らかに一線を画しています。
シンプルな、出汁とお味噌だけのお味噌汁に、
刻んだ生の沢蕗のふきのとうを散らす。
その飼い馴らされていない鮮烈な風味は、
慌しく、つい季節を忘れがちな心身の曇りを綺麗さっぱりと拭い去ってくれるようです。


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今朝も、氷点下の厳しい冷え込みとなりましたね。

まだまだ、寒のうち。
春本番が本当に待ち遠しい、今日この頃です。









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