2010年12月03日

キラキラ

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子供の頃、道の向こうにキラキラした石が落ちていると、それだけでどきどきした。
ほんとうに幼いうちは、それを宝物だと思い、少し大きくなって、それが石英だと知ってからは、やはり宝物だと思った。
水撒きするホースにかかる小さな小さな虹も、宝物だった。
走る車のサイドウィンドウにぺたりと張り付いた水滴が、ふるふると震えながら流れて行くときの、その輪郭だけがなみなみと銀色に光る不思議な形も(どうして飛んでいかないのだろう?どうしてもっと速く流れていかないのだろう?)、自分だけが知っているひみつの宝物だった。
大人になってからも、キラキラしたものについ目が行ってしまうのは、ただ、それが綺麗だからだ。
雨上がりの陽射しに窓の雨が、遠くの雲が、キラキラと光るのを見て嬉しくなって、それを誰かに教えたくなるもの、ただ、それが綺麗だからなのだ。

また、雨が降り出した。
アルストロメリアの低い茂みが、朝露の玉を密かに約束する、指切りの音をさせている。











ラベル:ラビット 小物
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2010年11月28日

「追憶」

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「追憶の中にあるものに、あとから名前をつけるなんてナンセンスなだけだよ。もしも当時、それに名前がなかったのだとしたら、なおさらね」









ラベル:ラビット
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2010年11月18日

結晶世界

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クリスタル越しの世界。


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結晶の中に閉じ込められた、糸杉。


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芳しき朝露の中にも。


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世界は閉じ込められる。


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この雲は、多面体の結晶の中をとおってきたのだろうか。


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青海波。









ラベル:朝露
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2010年10月28日

「ときにはハードボイルド」/幻の短編集

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SF作家・乙貞久、唯一の非・SF作品集。
ほんの少し前まではマニアの間でさえ知る人ぞ知る、だったのが、いつの間にか言わずと知れた、になっていたというのだから、情報化社会というのは本当に恐ろしい。
さて、内容は、というと、タイトルのごとく、普段は全くハードボイルドに縁のない人々が、些細なことをきっかけにハードボイルドしてしまうという物語の、連作短編集である。
が、ハードボイルドと言っても、別に”ストイック”な探偵や場末のバーが出てきてこんにちはするわけではない。
美女もトレンチコートも謎の男も出てこない。
いや、出てこないこともないのだが、その美女は襟刳りの大きなブラウスやマスカラよりも栗最中やカステラが似合うタイプだし、トレンチコートには醤油のしみがついていたりするし、唯一出てくる謎の男は、こともあろうに絵本の中の人物(?)だ。

はっきり言って、地味。

なのに、痛快、なのである。

表題作である「ときにはハードボイルド」を含め、収められた5編の物語全てにおいて、事件は起きない。
「事件」どころか、「ちょっとした事件」さえ、はたまた「ボーイ・ミーツ・ガール」すら起こらない。
しかし、”その瞬間”、主人公が呟いたその一言に、読者は深く共感してしまうのだ。
どう書いてもネタバレになってしまうので、ここでは内容について詳しく書けないのが苦しいところだけれど、ともかくそれはまるで、手品を見ているかのような一瞬で。

この瞬間について、「自転車に乗れたような」、と評した人がいた。
物語の手法についてではない。
読み手が、主人公に共感する”能力”(という言葉を使ってよければ、だが)を獲得する瞬間についてだ。
主人公に共感してみるまでは、今まで自分の中にそんな感覚を感じる部分があったことすら知らなかったような、小さな、微妙な心の動き。
あるいは、なんとなく知ってはいたけれど、名前をつけられなかったあの感覚。
けれども、一度読んでしまえば、わかる。
今まで形容出来なかった”あの気持ち”を、これからは何と呼べばいいのかを。
目の覚めるような爽快感とともに。

やがて、あなたは気付くだろう。
あるときふと、自分も胸の中でそう呟いていることに。
「ときには、ハードボイルド」。
多分、小さく、くすっと笑いながら。


※ちょっとした余談を。乙貞久がこの作品を書いたのは、マニアによる分析によると、作品中に描写されている内容からして1990年〜1995年頃のことらしい。つまり、彼がSF作家としてノリにノっていた、かつ一番多忙だった時期なのである。しかも、後にも先にも、彼はSFでない作品は1本も書いていない(あるいは見付かっていない)。あれこれ模索していたはずの素人時代の習作の中にさえ、SFでない作品は存在していないという(これまでにわかっている)事実と考えあわせると、これはなかなかに興味深いテーマである。









ラベル:ラビット
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2010年10月06日

夜のお菓子

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林檎三分の一個分を三つに割って、テフロンのホットサンドパンで三分間ソテーする。
仕上げにちょっとシナモン振って、お気に入りのお茶を淹れて。
そんな簡単なお菓子なのに、夜に焼くお菓子は、どこか特別なのは何故だろう。

それは、真昼間のペディキュアよりも、夜にほどこすペディキュアの方が、
どこか艶めかしい感じがするのと、すこし似ているのかもしれない。

更けていく、秋の夜。
山鳥よりも、一杯のジンジャー&カモミールティーが、秋の夜を長いものにしていく。
お気に入りの本と、お気に入りの静けさと。
せめて、カップに残ったお茶の名残りが、冷めるまでは。










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